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近年のCPUは、高性能化とともに「必要に応じて性能を調節できる機能」も充実してきました。Intelの第12世代CPU「Alder Lake-S」ではこの機能が一層充実しており、「電力リミットチューニング」と呼ばれています。
今回は夏の冷却対策や高騰する電気代対策として電力リミットチューニングの方法とメリットを紹介します。
電力リミットチューニングとは
電力リミットチューニングとは、読んで字のごとく「消費電力量のリミット(限界値)を調整する」チューニングです。
勘違いしないでほしいのは、電力リミットチューニングが「単に性能を底上げするだけ」の方法ではないと言う点ですね。
電力リミットを引き上げると確かにCPUの性能は上がります。しかし、電力リミットは「消費電力を上げる」ことよりも「最適値を見つけられる」ことのほうが、メリットは多いのです。
電力リミットチューニングで何をするかというと、Intelが提供する電力プラン機能「PBP」や「MTP」を活用して、自分に最も合った電力プランを見つけるのです。
PBP(Processer Base Power)
TDPに代わって作られた仕様であり原則としてCPUごとに決まっている。第12世代Coreシリーズから取り入れられ、従来のPL1に相当。
MTP(Maximum Turbo Power)
最大ブースト時の維持に必要な電力仕様。従来のPL2に相当しつつ、第11世代よりも最大ブースト時間を長く維持できるよう設計されている。システムベンダーが任意に変更可能。
PBPは、以前のIntelプラットフォームでいえばPL1、MTPはPL2に相当します。ただし、MTBは最大ブースト時間を延長できるため、PL2よりも少し機能性が高まっていますね。
電力リミットチューニングは、この2つを併用しつつ、特にMTPの最適設定を見つけ出す作業と言えます。
UEFI上から電力リミットを変更すると?
具体的には、マザーボードのUEFI上から電力リミットを調整することで、消費電力量や発熱量の低下が体感できるでしょう。
電力リミットは「Long Duration Package Power Limit(PBP、PL1に相当)」や「Short Duralation Package Power(MTP、PL2に相当)」という名称になっていることが多く、この数値を「auto」や規定値から変更することで電力リミットが変更されます。
例えば電力リミットが標準で無制限(Unlimited)に設定されている場合、これを180Wや90Wといった数値に落としていくわけですね。
また、あまりに電力リミットを下げすぎると、本当に必要な時に必要な性能を得られなくなりますので、「消費電力の減少幅>性能低下」となるように設定値を煮詰めることを忘れないようにしましょう。
以下は、Core i9 12900Kにおける電力リミット値とベンチマークスコアの結果です。
CINEBENCH R23 マルチコア性能
初期値(無制限)…約27000
240W制限…約27000
180W制限…約26000~26500
140W制限…約25000
125W制限…約24000
UEFI初期値や240W制限に比べると、180Wや140W、125Wのワットパフォーマンスが非常に高くなっていることがわかりますよね。
特に125W制限は、消費電力が約半分になっているにもかかわらず、スコアは12%強しか落ちていません。つまり、約半分の消費電力で88%程度の性能は確保できそう、ということになります。
電気代が高騰しそうな2022年、この電力リミットチューンは、中途半端なパーツ購入よりもインパクトがありそうです。