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CPUの世界では、数年に一度「隠れた名機」と呼ばれる製品が登場します。
今回紹介するCore i7-5775Cもそのひとつ。Core i7-5775Cは、Intelの第5世代CPU「Broadwell」アーキテクチャに属する、非常に珍しいCPUで、いわゆる「珍種」です。
リリースは2015年とやや古い製品ですが、独特の設計思想と技術的な挑戦により、今でも一定の評価を受けています。今回は、5775Cの特徴や「早すぎたCPU」と言われる理由を整理して解説します。
10年前にL4キャッシュ搭載?Core i7-5775Cがレアだった理由
Core i7-5775Cは、デスクトップ向けCPUであるBroadwell世代において、限られた数しか出荷されなかったCPUです。Broadwell自体、デスクトップへの展開が小規模に留まり、わずか9種類程度しか市場に投入されませんでした。
比較対象となるHaswell世代(第4世代)は90種類以上あったため、その供給量は10分の1以下。めちゃくちゃ少ないですね。
さらに、モデル末尾に「C」が付くCPUも非常に珍しいです。Broadwell世代以外ではほとんど例がありません。「C」は「倍率ロックフリー(オーバークロック可能)かつ、TDPが65Wに抑えられていること」を示していたと考えられています。
こうした背景から、5775Cはリリース当初から「レアCPU」として注目されました。
L4キャッシュ(eDRAM)搭載という異例の構成
5775C最大の技術的特徴は、L4キャッシュ(eDRAM)を搭載していた点です。通常、CPUのキャッシュはL1~L3までですが、5775Cではメインメモリより高速な「128MBのeDRAM」を、L4キャッシュとしてCPUダイ上に搭載。
この3Dトランジスタ技術により、
・内蔵GPU(Iris Pro Graphics 6200)の性能強化
・メインメモリアクセス負荷の軽減
・IPC(クロックあたりの命令実行数)の向上
といった効果が期待されました。
ただし、L4キャッシュの搭載には広いダイ面積とコストがかかるため、後続世代では継承されませんでした。かなり実験的なCPUだったわけですね。
性能面では「惜しい」CPUだった
技術的には先進的だった5775Cですが、性能面では一部に物足りなさもありました。
定格クロックが3.3GHz、最大ブーストでも3.7GHzと、当時の上位CPUに比べやや低め。オーバークロック耐性もあまり高くなく、常用安定の限界は4.2GHz程度に留まる個体が多かったようです。
当時のライバル製品(Core i7-4790Kなど)と比べると、マルチコア性能で見劣りするケースもあったとのころ。
また、価格設定も高め(4万円台)で、コストパフォーマンス面では不利な評価を受けることが多かったです。こうした点から、リリース当時は「通好み」な存在にとどまった感があります。
省電力性と長寿命、そして再評価
一方で、TDP 65Wという省電力設計は本物で、アイドル時の消費電力も非常に低く抑えられていました。
また、内蔵GPU性能も高く、当時のAPU(AMD APUシリーズ)を凌駕するケースもありました。
今日の視点で見ると、
・そこそこのCPU性能
・高い省電力性
・安定した動作
というバランスが、ライトゲーミングや一般用途PCには非常に適していたことがわかります。
さらに、L4キャッシュの存在は、一部ゲームやメモリ負荷の高い作業で「隠れた底力」を発揮する場面もあるため、中古市場では今も密かに愛好家に支持されています。
ちなみにキャッシュ容量が物を言うタイトルでは、9年前くらいのCPUにも拘わらず、非常に高いパフォーマンスを発揮するケースもあるようですね。
私の知人も、3年ほど前に「結局5775Cのゲーム性能が最新のどのCPUより高い」と豪語していました。(真偽は定かではないですが)
異端だが現在のCPUの原点でもある
Core i7-5775Cは、当時の主流からは少し外れた「異端」の存在でした。
しかし、そこに詰め込まれた先進技術(3D積層キャッシュ、低TDP設計)は、今日のCPU設計にも通じる先見性を持っていました。
例えばAMDのX3Dシリーズで使われている「3D V-キャッシュ」などとも通ずる点がありますよね。キャッシュを積み増す、という設計思想は特に似ています。
もし手元にこのCPUが残っているなら、大切に使い続ける価値はありそうです。というよりも収集マニアの間で話題になりそうですね。