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AMD RyzenシリーズのCPUを使っていると、マザーボードの設定画面「Infinity Fabric(インフィニティファブリック)」という表記を目にします。
私もよくわかっていなかったのですが、実は重要な機能だと理解してからはしっかりチェックするようになりました。
今回はInfinity Fabricとは何か、どんな役割を持っているのか、そして性能アップのために調整すべきポイントを解説します。
Infinity Fabricとは? たとえるなら“CPU内部の高速道路”
Infinity Fabricは、AMDが独自に開発した情報伝達の仕組みです。
たとえば、CPUの中には「計算担当」「記憶担当」「通信担当」など複数の部署(=コアやメモリコントローラ)が存在しています。
これらがお互いに情報をやり取りするための高速道路が、Infinity Fabricなのです。
もしこの高速道路が細くて混んでいたら、せっかく高性能なCPUでも情報渋滞が発生してしまいます。
逆に、広くてスムーズな高速道路が整備されていれば、CPUの各部署が効率よく連携でき、パフォーマンスが最大限に発揮されます。
Infinity Fabricとメモリクロックの密接な関係
この高速道路(Infinity Fabric)には、制限速度(動作クロック)が存在します。
これが、よく設定項目で見かけるFCLK(Infinity Fabric Clock)です。さらに、FCLKはメモリクロック(MCLK)と深く連動しています。
たとえば、FCLKが1800MHz、メモリクロックが3600MHzなら、FCLKとMCLKが1:1で動作している状態です。この状態が最も道路(通信)の渋滞が起きにくく、パフォーマンス的に理想とされています。
仮にFCLKとMCLKのバランスが崩れると、メモリからCPUへの情報配送トラックが渋滞に巻き込まれたような状態になり、データのやり取りが遅くなってしまうのです。
FCLK調整で得られるメリット
FCLK(高速道路の制限速度)をメモリクロックと1:1の比率で設定することで、以下のようなメリットがあります。
・データのやり取りがスムーズになり、レイテンシ(遅延)が減る
・CPUとメモリが無駄なく連携し、フレームレートやレスポンスが改善
・ゲームやマルチタスク処理時の安定感アップ
とくにRyzen 3000・5000シリーズでは、FCLK1800MHz × MCLK3600MHzが鉄板の最適解とされてきました。
じゃあFCLKをどんどん上げればいいのか?
「じゃあ、もっとFCLKを上げれば速くなるのでは?」と思うかもしれません。
たしかに、FCLK 1900MHzや2000MHzに設定すると、高速道路の制限速度を引き上げたようなものなので、帯域幅は広がります。
しかし、ここで問題になるのが道路そのものの設計限界です。
CPUごとに高速道路の舗装状態(個体差)が違い、無理に制限速度を上げると、事故(動作不安定)や通行止め(OS起動失敗)が発生します。
さらに、最新のRyzen 7000シリーズでは、道路設計が進化した代わりにFCLKとメモリクロックの同期による性能向上効果は少なくなっています。
つまり、無理に制限速度を上げても、得られる恩恵はわずかというケースが多いのです。
Infinity Fabric調整時の注意点
Infinity Fabricの調整には、いくつかの落とし穴があります。
・個体差が大きい:同じCPUでも、FCLK1800MHzで安定するもの、1900MHz以上で動くものなど、当たり外れがある。
・無理な設定はシステムクラッシュの原因:限界を超える設定にすると、OSが起動しない・データ破損など深刻なトラブルにつながる。
・体感できる性能差は微妙な場合が多い:とくに日常利用やゲーム用途では、FCLK調整による違いはベンチマークでしかわからないことが多い。
細かい設定はできるがあまり触らなくてもOK
Infinity Fabricは、AMD Ryzenの内部でCPUコア・メモリ・I/Oをつなぐ“情報高速道路”のような存在です。
この道路の制限速度(FCLK)とメモリクロックを適切に調整することで、Ryzenの性能を引き出すことができます。
しかし、無理な設定は安定性の低下やトラブルにつながるため、用途とリスクを理解したうえで慎重に行うことが重要です。
「もっと自作PCを突き詰めたい」「ベンチマークスコアを1ポイントでも伸ばしたい」という方は、ぜひInfinity Fabricの調整にチャレンジしてみてください。