水冷PCが流行しない理由

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水冷PCの登場は、2003年まで遡ります。すでに登場から18年が経過し、すっかり市民権を得たと思いきや…それほど普及していませんよね。

「静かでよく冷える」はずの水冷PCがなぜあまり流行らないのか、その理由を整理してみました。

水冷PCのメリット

水冷PCの冷却性能は確かに優秀です。同程度の冷却性能を実現する場合、空冷ならば巨大なヒートシンクとファンをもつCPUクーラーや、大口径のケースファンが必要です。

水冷ならばこうした騒音・スペースの無駄を省きつつ、スタイリッシュに良く冷えるPCを作ることができます。

また、水冷の特徴として「液体によって熱を好きな場所に移動させられる」という点が挙げられます。

空冷はエアフローの流れの中でしか熱を移動させられません。しかし水冷ならば、チューブ内を流れる液体の行先=熱を逃がす先であるため、熱処理の自由度が高いのです。

これは自然とデザインやレイアウトの自由度につながります。

それでも流行らない水冷PC なぜ?

水冷PCが登場した当初は「静音性と冷却性の両立」が謳われていました。たしかにこれは事実ですが、水冷PCといえども「無音」にはできません。

水冷PCには液体を循環させるためのラジエーターや、ラジエーターを冷却するためのファンが必要です。したがって、空冷ほどではないにせよ、水冷も何かしらの音は発生するわけです。

また、近年の空冷システムの優秀さや半導体の低発熱ぶりも、水冷いらずの状況に拍車をかけています。

最近のCPUやGPUは、消費電力と性能のバランスが常に評価されます。エコ意識の高まりやランニングコスト(電気代)の関係から「トップのパフォーマンスだけが良いものは売れない」のです。

こうした流れから各社ともTDPを意識した製品を開発するようになりました。TDPが低ければ、消費電力や発熱量も抑えられるため、「水冷でなければいけない理由がない」のです。

空冷のCPUクーラーも大型化や効率化が進み、以前よりも冷却能力が高くなりましたからね。「一部のハイエンドPC以外、空冷で事足りる」のが2021年の現状ではないでしょうか。

個人的な意見ですが、水冷が必要になるのはTDP100W以上のCPU+RTX3080以上あたりからだと思います。このクラスでも多少の音さえ目をつむるなら空冷で十分です。

「TDP65WのCPU+RTX3060クラス」ならば、水冷にすることのデメリットのほうが大きいでしょうね。

水冷は「見た目だけのエアロパーツ」か?

以前、車好きの友人が「水冷PCはつまるところ、ドレスアップ目的でエアロパーツをつけている車と同じ」と言っていました。

さすがにそれは言い過ぎだろうと思いましたが、ごく一部のハイエンドマシンを擁するゲーマー以外は、これが真実かもしれません。

要は「無用の長物」になりやすいのです。確かに見た目は非常によく、冷却性能と静音性を高いレベルで両立しやすいです。

しかし、CPUやGPUは「空冷で制御可能なレベル」を想定していることは明確であり、水冷仕様を前提とした設計になっていません。

また、突き詰めれば空冷も水冷と同レベルの冷却性能を持つことが出来ます。水冷はラジエーターの分だけ大型化しやすいため、空冷に比べて物理的なアドバンテージもそれほどありません。

水冷PCが空冷をおびやかす存在になるためには、あと一歩か二歩は技術的な進化が必要なのかもしれませんね。