「ほどほどで安いGPU」があまり生まれない理由

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2021年から2022年まで続いた異常なまでのGPU高騰がようやく落ち着き、2023年は「グラボの買い時」と言える時期です。

しかし、それでも高価格化が進んでいることに変わりはなく、安くてほどほどのGPUはどんどん少なくなっています。

なぜ、「ほどほどの性能で安いGPU」は生まれないのでしょうか。これには業界の複雑な事情が絡んでいるようです。

GPUは事実上、2社の対決である

ほどほどの性能で安いGPUといえば、GTXの1600番台やRX6400などが挙げられます。しかし、これらは旧世代もしくはローエンドに属するGPUですよね。

ちょっと古いお話で申し訳ないのですが、15年ほど前はミドルレンジクラスにお値打ち価格のGPUがあり、グラボはもう少し安かったのです。

しかし、PC向けのGPUは、「Nvidia」と「AMD(旧ATIを吸収)」の2台巨頭によるせめぎあいで価格が決まります。

PC向けのGPUを定期的にリリースできるのは、世界でこの2社というのが実情です。もちろん、最近はIntelが独自GPUを開発したり、スマホ向けSoCの分野で他社が成長するなど、他の企業も頑張っています。

それでもNvidiaとAMDの持つ技術力は圧倒的であり、今後もこの2社を中心にGPU界隈は動いていくことでしょう。

一般的に、業界を仕切っている企業の数が少ないほど「寡占状態」になるため、製品の価格は高くなります。これはどの分野でも同じです。

もっと言うと、GPU界隈はNvidiaの力が圧倒的に強く、AMDがかろうじて追随している状態なので、事実上は1社独占に近いとも言えるでしょう。

NvidiaがGPUの値付けを引き上げればAMDもそれに対抗する形をとり、我々一般ユーザーのお財布の都合から離れたところで価格が上がっていくのです。

そもそも「安くてほどほど」を生み出すのが難しい

NvidiaやAMDのGPUがリリースされる過程を見るとわかるのですが、この2社は最初からローエンドやミドルレンジを生み出しているわけではありません。

最新のアーキテクチャやプロセスルールを使って、まずハイエンド帯を最初に開発し、そこからTDP・シェーダーの数。クロック数などを落としてローエンド・ミドルレンジをリリースしています。

誤解を恐れずに言えば「安くてほどほどのGPU」はハイエンド帯の副産物なのです。実際に売れるのはロー~ミドルレンジですが、これもハイエンド帯という看板があってのこと。

したがって、開発力や供給力で2社に劣る後発メーカーが、安くてほどほどのGPUを生み出すのはハードルが高いのです。せっかく作っても売れない、開発コストを回収できないというリスクがありますから。

あの巨大企業Intelでさえ、独自GPUの「Ark」で苦戦していますよね。Intelはまさに「安くてほどほど」のところからGPU界隈に切り込もうとしていますが、実際は中途半端な性能でやや割高なGPUとなっており、本格的に売れるまでにはまだまだ時間がかかります。

しばらくは「安さ=古さ」の状態が続く

以上のことを踏まえると、GPUに関しては安い=古いという図式が続きそうです。

ただし、暗号資産マイニングなどゲーム以外の需要が落ち着いたので、もうしばらく待てばまたミドルレンジクラスの価格が落ちるかもしれません。

為替の状況も絡むので何とも言えませんが、予算が厳しい方はBTOメーカーなどが売っている中古グラボも視野に入れていきましょう。