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CPUの低電圧化は消費電力削減や発熱軽減のメリットがありますが、なぜか挙動が不安定になるという報告もありますよね。これには「ノイズマージンの不足」が関係しているようです。
ここでは、CPUの低電圧化とノイズマージンの関係性について解説します。
低電圧化による挙動不安定はノイズマージンが原因?
一般的にCPUの低電圧化は、消費電力や発熱の低下といったメリットがクローズアップされがちです。しかし実際には、「不安定な挙動」や「起動不能」といったリスクも考えられます。
これらは低電圧化によって起こる「ノイズマージンの不足」が原因かもしれません。CPUの回路設計ではノイズマージンが確保されており、低すぎる電圧では安定した十分なノイズマージンが取れないのです。
ノイズマージンは、入力信号の変動や周囲のノイズに対して回路が安定して動作するための余裕領域を指します。これは、CPUが正常に信号を処理し、予期しないエラーや不安定な動作を防ぐために必要なのだとか。
ノイズマージンは何の影響を受けるのか
ノイズマージンは、主に2つの要素によって影響を受けます。
電源ノイズ
電源から供給される電力には、さまざまなノイズ成分が含まれます。電源ノイズは、CPU回路に入り込んで信号を乱し、正確なデータ処理を妨げる可能性があります。ノイズマージンは、これらの電源ノイズに対抗する余裕を持つことで、信号の正確性と安定性を確保します。
クロストーク
CPU内部の回路や配線において、隣接する信号線間で相互干渉が発生する現象をクロストーク(もしくはクロストークノイズ)と呼びます。
クロストークは、信号の品質を低下させ、誤ったデータ処理を引き起こす可能性があるとのこと。ノイズマージンは、クロストークによる干渉を吸収し、正確な信号伝達を確保するための余裕を提供しているようです。
ノイズマージンの低下は具体的に何を引き起こすのか
一般的にノイズマージンを確保するためには、以下の要素が考慮されるとのこと。低電圧化によってこれらのバランスが崩れると、挙動の不安定さとなるようです。
電圧設計
CPUの回路設計では、入力信号と出力信号の間に適切な電圧マージンが設定されます。このマージンは、信号の正確な読み取りと安定した出力を確保するために重要です。電圧が低すぎるとノイズマージンが不足し、信号の正常な処理が妨げられる可能性があります。
CPUの低電圧化で挙動が不安定になるのは、「設計電圧よりも電圧が下がることでノイズマージンが低下→信号の読み取りと出力の精度が低下」という理屈のようですね。
遅延時間
CPU内部の回路や配線には、信号の遅延が存在します。遅延時間は、信号の推移や切り替えが完了するまでの時間を示します。
ノイズマージンは、遅延時間を考慮に入れることで信号のタイミングを調整し、クロストークなどの干渉を最小限に抑えるようです。
ノイズマージンが低下することで遅延時間の調整がうまくいかず、クロストークの干渉を受けやすくなるのでしょう。
クロック周波数
CPUのクロック周波数は、簡単に言えば「回路の切り替え速度」を示します。クロック周波数が高ければ処理速度は向上するものの、同時にノイズマージンを縮小させる傾向があります。
そのため、高クロックなCPUほどノイズマージンを確保しつつ必要な性能をバランスよく発揮するような設計が施されているわけで、低電圧化によってこのバランスが崩れると回路切り替えが上手くいかなくなるのかもしれません。
低電圧化はほどほどに
少し前にAMDのRyzen 7 5800X3Dの低電圧化が流行しました。コアの電圧をデフォルトの1.185Vから1V未満に下げても、ゲーム性能が落ちないという特性を活用したチューニングのようですね。
ただし、オーバークロックと同じように低電圧化にもある程度「個体差」が影響します。また、低電圧化による不具合は保証の対象外にもなりますし、リスク自体はオーバークロックと大差がありません。
私の個人的な意見ですが、実はオーバークロックよりも見極めが難しいのが低電圧化だと思います。というのは、低電圧化に関するツールやノウハウが非常に少ないからです。
故障のリスクを少しでも減らすために、低電圧化は10%程度の範囲内で試してみたほうが無難だと思います。