3D V-Cacheが両面積層に!何が変わった?

※当ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

AMDのCPU技術の中で、特にPCゲーマーから高い注目を集めているのが「3D V-Cache」です。

実際にRyzen 7 5800X3Dなどで実証されたように、ゲーム性能を大幅に向上させることで知られています。さらに最近のモデルでは「両面積層」という進化を遂げました。

今回は、3D V-Cacheが「片面積層」から「両面積層」になったことによる変化を解説します。

AMDの3D V-Cache技術とは?

AMDが開発した「3D V-Cache」は、CPUにおけるL3キャッシュ容量を従来の限界を超えて拡張するための技術です。

通常、CPU内部のキャッシュは、コアと同じ平面(2D上)に配置されました。そのため面積や製造コストの制約が大きく、キャッシュ容量を増やすことには限界がありました。

そこでAMDは、ダイの上に「キャッシュ専用ダイ」を縦に積み重ねる方法を採用しました。これが「3D V-Cache」です。

立体的にキャッシュを積層することで、CPUコア設計を大きく変更することなく、大容量のL3キャッシュを搭載できるようになったのです。

メモリアクセス頻度が高いゲーミング用途や、科学技術計算、金融シミュレーションといった分野で非常に大きな効果を発揮します。キャッシュミスによるメモリ遅延を減らし、処理全体の高速化をもたらすからです。

3D V-Cacheの初採用は「Ryzen 7 5800X3D」で、以後、Zen4世代の「Ryzen 7000X3Dシリーズ」などにも展開されています。

これまでは片面積層だった

初期の3D V-Cacheでは、CPUダイの一部領域にのみ、片面(表側)からキャッシュダイを積層する構造が採用されていました。

つまり、CPUコア群のある部分とは別に、空いている領域にだけキャッシュを積む方式です。

この「片面積層」方式では、

・CPUダイの熱管理(放熱)をシンプルに保てる
・キャッシュの追加による設計リスクを最小限に抑えられる

といったメリットがありました。

しかし、積層できる面積には限りがあり、キャッシュの増量にも限界がきます。たとえば、Ryzen 7 5800X3Dでは通常版の3倍近い96MBのL3キャッシュを搭載しましたが、それ以上積もうとすると物理的な制約にぶつかるわけです。

最新のモデルでは両面積層になった

この「物理的な制約」を打ち破るために採用されたのが「両面積層」の3D V-Cacheです。端的にいえば、CPUダイの表裏両面にキャッシュチップを積層する方式です。

つまり、物理的に片面だけでは積みきれなかった分を、上下両面に広げることで限界を押し広げたわけです。両面積層は技術的ハードルが高く、特に「熱(Thermal)」管理が重要な課題でした。

チップ上下に熱源が増えるため冷却設計にも工夫が必要になりますが、得られるキャッシュ容量とパフォーマンス向上効果は非常に大きいです。

片面から両面積層で何が変わったか?

まず最大の変化はキャッシュ容量の増大です。単純に搭載できる物理量が2倍、というわけではないのですが、片面比で20~30%以上多いキャッシュメモリを配置できるようになりました。

また、データのやり取り経路が立体的に広がるため、アクセスレイテンシの均質化(アクセス速度のばらつきが減る)も期待できます。

負荷の高いアプリケーションでのスループットがさらに向上し、大規模なシミュレーションや次世代ゲームエンジンでも、高い性能を発揮しやすくなります。

一方で、両面積層による発熱増加という課題も無視できません。最新モデルではダイレクト液冷や高性能ヒートスプレッダの採用など、冷却面でも新たな工夫が求められる時代になっています。

今後もゲーマー向けに特化し続ける3D V-Cache

AMDの3D V-Cache技術は、CPU性能のボトルネックになりがちだったメモリアクセス問題に真正面から取り組み、高性能を引き出す革新的な技術です。

片面積層から両面積層への進化により、今後さらに大規模なキャッシュ搭載が進むでしょう。ゲーミングだけでなく、AI推論や大規模データ処理といった新たな分野への展開も期待されています。

すっかりゲーマーの中に定着した「X3D」なCPUの主要技術ですので、今後も注目していきたいですね。