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現状、ゲーミングPCの冷却方式は「水冷」「空冷」のどちらかです。最近は特に水冷が注目されていますよね。
なんといっても空冷に比べて絶対的な冷却性能が高いので、高TDPなCPUの安定稼働には欠かせない存在になっています。
しかし、水冷はどうしても「かさばる」のがネック。しかし次世代の水冷システム「パッシブ塩水冷却」ならスリム化が可能かもしれません。
パッシブ塩水冷却とは
パッシブ塩水冷却とは、簡単に言えば「平たいヒートシンクの安価に塩水を入れ、水分が蒸発するときの冷却効果(気化冷却)を利用して冷やす」仕組みです。
香港城市大学エネルギー環境学部で開発され、正式名称は「吸湿性塩含有膜封入ヒートシンク(HSMHS)」とのこと。
具体的には、吸湿性のある臭化リチウム塩の溶液から水分が蒸発する際の気化冷却でCPUを冷やすようです。
「水蒸気が発生するのだから、いずれは水がなくなるのでは?」と思うかもしれませんが、この点も対策済み。
この仕組みでは
「離脱冷却プロセス」
「吸収再生プロセス」
という2段階のプロッスによって水分を循環させるそうです。離脱冷却プロセスでは水分の蒸発で冷却を行い、冷却が終わると吸収再生プロセスが発動。
吸収再生プロセスでは、水分が抜けたことで高濃度になった塩水が、再度空気から水分を吸収するので、水分が減ることはないという理屈。
また、
・臭化リチウム塩を水蒸気しか通過させない多孔質の膜に閉じ込める
・多孔質の膜を金属プレートで挟む
という仕組みによって、塩分はプレートの外部に放出させず、水分だけが蒸発と吸収を繰り返すので電子機器への影響もないのだそうです。
仕組みは単純ですが、おそらく多孔質の膜の作り方が優秀なのでしょうね。
ちなみに通常にヒートシンクよりも約33%ほどデバイスの性能を向上させられるそうです。つまり、サーマルスロットリングを回避し、高負荷で稼働させる力があるということですね。
ゲーミングPCへの実用化は?
いまのところ「吸湿性塩含有膜封入ヒートシンク(HSMHS)」は、データセンターに配置されたサーバー用の冷却ソリューションとして開発されているとのこと。
データセンターでは冷却コストが問題になることが多いのですが、HSMHSは冷却用のファンがないために電力コストが非常に低いので低コスト化に貢献します。
また、従来のパッシブ冷却システム(ファンやポンプを持たない静的な冷却システム)は、熱飽和までの時間が短く、すぐにサーマルスロットリングが発生するという問題がありました。
この点もHSMHSは優秀で、64度以下の状態で400分ほど冷却できるとのこと。つまり、16日間の連続稼働が可能というわけです。2週間に一度、吸収再生プロセスを経ればまた復活するので、十分に実用的。
ただし、ゲーミングPCへの適用されるかは未知数です。個人的には、薄型・小型化に進むゲーミングPCにも非常に相性が良さそうですが、メンテナンスの頻度があがりそうという問題点も見えます。
しかし、1日8時間稼働させ、あとは電源を落とすといった使い方ならば、ほぼ無音で冷却できるのは魅力ですね。
さらに言うならば、大型のヒートシンクやファンが無いので、mini-ITXやミニPCにも適用が可能という点があります。シンプルな技術で実用性が高いので、ぜひゲーミングPCにも使ってほしいですね。