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ベイパーチャンバーという冷却技術をご存じでしょうか。ベイパーチャンバーは、2022年ころから次世代の冷却技術として注目され始め、最近になってグラボの冷却にも応用されています。
今回は冷却の新技術「ベイパーチャンバー」を採用したグラボをご紹介します。
ベイパーチャンバーとは?
ベイパーチャンバーとは、金属製放熱部材のひとつです。もっと簡単に言うとヒートパイプの仲間です。
薄く平らな金属を張り合わせ、中は空洞になっていて、細い毛細管が張り巡らされていますその構造は非常に薄い金属層で成り立ち、内部には細かい毛細管と水分が充填されています。
その水分がデバイスの発熱により蒸発し、気化冷却を起こすことで冷却が行われます。
主にスマートフォンなどの小型デバイスで用いられているベイパーチャンバーですが、PC用途への適用例はまだ珍しい状況です。
従来のグラファイトシートよりも高い冷却効果が得られるため、空冷や水冷といった従来の冷却方法に代わる有望な選択肢とされています。
以下は空冷と水冷、ベイパーチャンバーの3つを比較したものです。
空冷:デバイスに接触した金属板部分から熱を吸収、ヒートパイプで熱移動、ヒートシンクで熱を放出
水冷:デバイスに接触した部分から熱を吸収、水分で熱移動、ラジエーターで熱を放出
ベイパーチャンバー(気化冷却):毛細管内部の水分で熱を吸収、水分の蒸発で熱を拡散・放出
空冷よりも冷却能力が高く、水冷よりも小型化・簡素化が可能という点で、両者の良い所を併せ持っている技術と言えるでしょう。
Noctua NF-A12×25はベイパーチャンバー方式のファン
さて、このベイパーチャンバーですが、PCにはなかなか適用されないという状況でした。しかし、2023年ころから徐々にベイパーチャンバー方式の冷却システムを備えた製品が登場。
そして2024年には、クーリングソリューション大手のNoctuaからベイパーチャンバー方式のファン「NF-A12×25」が登場。
さらにこれを2基搭載するASUSのグラボ「RTX 4080 SUPER 16GB GDDR6X Noctua OC Edition」が発売となっています。
このグラボはNF-A12×25を2つ並べて搭載しており、高い冷却性能を誇ることが容易に想像できる製品。
価格は26万円弱とかなり高額ですが、「こんなに静かなハイエンドグラボがあるのか」といったコメントがつくほど、静音性が高いようです。
ベイパーチャンバーは毛細管を活用した気化冷却ですから、水冷のようにラジエーターの稼働もなく、空冷のように高速なファンも必要ありません。
高負荷状態でもかなり静かですから、静音で高性能なグラボが欲しい方はチェックしておいたほうが良いでしょう。
唯一の懸念は「メンテナンス」
ただし、ベイパーチャンバー方式はユーザーが分解したり組み立てたりできるような構造ではないので、故障や不具合の場合はコストが高くなりそうですね。
構造が精密かつ複雑なので、メンテナンス性が解決できれば本当におすすめのソリューションになるでしょう。
懐に余裕がある方は、ぜひ購入を検討してみてください。ちなみに私はまだ購入していませんが、知人の話では「ミドルレンジのセミファンレスモデルが中負荷で稼働しているレベル」の静かさだそうです。